“分断”を“連携”に変える 「メルカート」の新サービスで業務効率化とデータ活用が加速するECへ
サイトオープン1年後の平均売上成長率603%(※1)の実績を持つクラウドEC構築プラットフォーム「メルカート」。同サービスを提供しているのが、「その商いの、いつもそばに。」を理念に掲げて多くのEC事業者を支援し続ける株式会社エートゥジェイだ。
2025年3月、エートゥジェイは「メルカート」において、さまざまな周辺システムとの連携開発を可能にする「システム連携開発サービス」の提供を開始した。同社 メルカート事業責任者/取締役 渡邉章公氏によれば、導入事業者の声から始まったこのサービスは、日々のEC運営業務を効率化するだけでなく、売上最大化のために不可欠な「データ活用」を実現するベースにもなるという。システム連携によってもたらされる事業者のメリット、そしてデータ活用を実現するポイントについて、渡邉氏に話を聞いた。
「メルカート」ユーザーの声から生まれた新サービス
──まず、3月に提供をスタートした「システム連携開発サービス」とは、どのようなサービスなのでしょうか。
「メルカート」はSaaS型のサービスです。現在、SaaSを組み合わせてオペレーションを組み立てていくという流れが世界的に加速しています。“人にシステムを合わせていく”タイプのサービスは自由度が高い一方で、特に変化の速いEコマース領域だとどうしても時間とともに陳腐化してしまい、トレンドに追従しにくくなるためだと思います。そのため、SaaS型の各種システム同士を組み合わせてどう運用基盤を作っていくのかが、各事業者にとって大きなテーマになっていると考えられます。
しかし日本では現状、SaaS型ではなくレガシーな基幹システムや独自の物流システムを維持しながら運用している企業が珍しくなく、EC側のシステムとWMS(Warehouse Management System=倉庫管理システム)やレガシーな基幹システムなどの周辺システム群を簡単に接続できず、運用負荷の肥大化や足かせになりつつある状況が多く見られます。
そうした課題を当社で吸収し、従来のシステム環境も維持しながら「メルカート」と接続できるように支援するのが「システム連携開発サービス」です。ECとその周辺システムとをつなぐ“ハブ”を私たちが開発して連携し、さまざまな業務を自動化できるようにするサービスです。
――「システム連携開発サービス」をスタートした背景を伺わせてください。また、同サービスは「メルカート」のユーザーにどのようなメリット、効果をもたらすのでしょうか。
「システム連携開発サービス」が生まれたきっかけは、お客様からの声でした。「『メルカート』を使い続けたいけれど、どうしても特定のシステムと連携したい」というご要望を実現したことが、このサービスを始めるきっかけになりました。
「システム連携開発サービス」が事業者様にもたらすメリットは、大きく3つあります。まず、バックヤードのシステムと接続することで業務の効率化につながります。2つ目は、EC周辺にある他の事業システムと連携することでお客様に対するサービスレベルの維持・向上につながることです。そして3つ目が、ECで獲得したマーケティングデータをつなぎ合わせ、可視化・活用することで、売上に貢献できるようになることです。
「システム連携開発サービス」のイメージ。カスタマイズ連携を実現し、さまざまなデータを統合する
――1つ目の「業務の効率化」について、詳しく教えてください。
現在、オペレーションはますます複雑化していますが、その業務を効率化するのが「システム連携開発サービス」の一番の狙いです。
カートシステムだけで全ての運用を完結させている事業者様はごく一部であり、多くの事業者様は、オフィスや倉庫で複数のシステムを利用し、その間で在庫データやユーザーデータの受け渡しを行っていますが、そのオペレーションには時間と人を割かなければなりません。
そこで、システムを連携させてデータを自動的に接続できれば、そうしたオペレーションが不要になります。コストカットにつながり、マーケティングや商品開発といった本当に必要なところにリソースを集中できるようになるでしょう。
また、ECのバックヤードが効率化されることもメリットです。例えば昨今では「即日配送」をはじめ各社の配送サービスレベルと消費者の期待値が高まっている傾向にあります。このビジネス環境でECを継続的に利用してもらうためには、できるだけ出荷スピードを上げる必要があります。システム連携によってそれが実現できれば、従業員にとっての業務効率化であるとともに、顧客体験を高めることにもつながります。つまり、連携によるさまざまな効率化が、売上アップに貢献することになります。
このような新サービスの提供や製品開発において私たちは、CX(Customer Experience=顧客体験)、DX(Digital Transformation)、EX(Employee Experience=従業員体験)という、「3つのX」を重視しています。CXを高めることがEXの改善につながり、それが進むことでしっかりデータを活用できるようになり、DXが推進されていきます。
データと向き合い、顧客の解像度を上げる
──「3つのX」を重視したシステム連携が、マーケティングに対する好影響にもつながるというわけですね。
マーケティングにさまざまなデータを活用できるようにするためにも、連携は重要です。ECでは対面で接客できないので、お客様の「顔を知らない状態」で施策を投入しても成果はでないでしょう。ECにおいて、お客様を知る手段はデータです。特に、よく購入してくれる10人・100人のお客様を知っていくことがECのマーケティングでは大事になります。
そのためには、データと向き合う必要があります。お客様の属性情報、感情や心理を示すサイコグラフィック系の情報、行動データや購買データといったさまざまなデータを把握して組み合わせ、お客様の解像度を上げていくことで、その人が“どんな接客を受けたいのか”が見えてくるのです。
──具体的には、どのような種類のデータを収集・活用すべきなのでしょうか。
わかりやすいのは行動データと購買データでしょう。注目すべきは「どのタイミングで、どういった“仕掛け”によって、どのくらいの単価で買ってくれたか」です。そうして行動データを深掘りしていくと、例えば「サイトを訪問して商品を見てくれたのに買ってくれないお客様」を可視化できます。これはECならではで、リアル店舗ではなかなかできません。
また、ECでの購買データとリアル店舗での購買データを重ねて分析することも有効です。それによって、例えばECでも実店舗でも購入してくれるクロスユースのお客様は、どちらか一方だけで購入している方と比較してLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)やブランドロイヤルティにどのような差があるのか、ということが可視化できます。
このように複数チャネルのデータをまとめ、一人ひとりのお客様を可視化できるようになれば、「リアル店舗で行った施策がふるわなかったように見えても、実はその影響でEC売上が伸びた」といったマーケティング施策の関連性が見えてきます。だからこそシステムを連携し、さまざまなチャネルのデータを1カ所に集めて活用することが重要になります。
さらに、購買行動に代表される定量データ以外にも、口コミやSNS、レビューといった定性データをマーケティングに活かせれば、「このお客様は、こういう気持ちで、この商品を買ってくれた」、あるいは「その商品を買った後に、こんな感想を持った」といった傾向も見えてきます。そうすることで、より顧客に対する解像度は上がり、適切な施策を打つことができるようになるでしょう。
株式会社エートゥジェイ メルカート事業責任者/取締役 渡邉章公氏
“技術と人”で事業成長をトータルサポート
――「メルカート」は多くの外部システムと標準連携していますが、それではカバーできなかったこともできるようになるというわけですね。
「メルカート」のようなSaaSだからと言って、その他のSaaSシステムと全てのデータが自動で連携されるわけではありません。最終的にはどちらかが“ハブ”となり、開発し、間をつないでいく必要があります。それを当社側で担い、支援するのが「システム連携開発サービス」で、3月にスタートしたばかりではありますが、すでにお客様からも「利用したい」というポジティブな反応をいただいています。
――「メルカート」は充実したサポート体制にも定評があります。新サービスが加わってもそこは変わらないのでしょうか。
もちろん、お客様へのサポートには引き続き力を入れていきます。ecbeingを含め私たちのグループ全体(※2)の強みと言えるのが、合わせて650人以上いるエンジニアです。大勢のエンジニアの力で「メルカート」と周辺システムの“ハブ”を開発し、サービスレベルを落とすことなく、しっかりと導入事業者様をサポートしていく体制を整えています。システム連携を実現するだけではなく、「集めたデータをどのように分析してビジネスに生かせばいいのか」といった、コンサルティング・マーケティング支援領域もサポートしています。
複数のシステムごとにデータが分散し、“分断”されている状態が当たり前だと思っている事業者様は多くいらっしゃいます。そうした皆さまに向けて、「メルカート」だけで閉じることなく、「まずは、このシステムをつなぎ、データを接続して可視化しましょう」と、お客様が気付きにくいところまでしっかりと提案することができます。
「メルカート」の特徴。サポートに対する導入事業者の満足度も高い
――新サービスも開始し、これから「メルカート」をどのように進化させていくのでしょうか。
まずは、プラットフォームとしてAIの活用に注力していきたいと思います。そのためには、パフォーマンスを上げていくためにデータをしっかりと蓄積していかなければなりません。
また、近年は中堅・大手のEC事業者様が必要としている機能の開発に力を入れてきましたが、これからは各業種や業態に応じた“深み”を出していきたいと考えています。ECと一括りにしても、BtoC、BtoB、リピート、モールなどモデルはさまざまで、必要とされるサービスやマーケティングアプローチも異なります。そのように業種・業態ごとに異なる領域に、“深く”踏み込んでいくことが重要になってくると考えています。
※1:サイト公開翌月から1年後の平均成長率。サービス利用1年未満のサイトは対象外(エートゥジェイ発表)
※2:エートゥジェイは株式会社ecbeing、株式会社エイトレッドなどと同じくソフトクリエイトホールディングスグループ