
老舗果物店銀座千疋屋の事例に学ぶ! 食品ECでCVRが130%改善した動画活用術【ギャプライズ セミナーレポート】
ECで食品を販売する中で「画像とテキストだけでは、おいしさや鮮度を伝え切れない」「せっかくサイトに集客しても離脱率が高い」といった悩みを持つ事業者は少なくないだろう。そうした課題を解決する方法として「ECサイトでの動画活用」を提案するのが、UGCマーケティングツールやショート動画コマースツールを提供する株式会社ギャプライズの金子葉月氏だ。
ECのミカタ主催のオンラインカンファレンスに登壇した金子氏は、老舗果物店である銀座千疋屋の取り組みを例に、食品ECにおけるショート動画活用術を解説。1894年創業の果物店が、いかにして若年層に認知を拡大し、CVR(コンバージョン率)を改善したのか。セミナーの要点をレポートする。
本記事は2025年3月に開催したオンラインカンファレンス「食品ECカンファレンス ~今取り組むべき最新事例を公開~」でのセミナー内容を基にしています
隙間時間の情報収集にはまるショート動画
何かしらの「気になる商品」を調べる時、現在では多くの人がスマートフォンを使うだろう。セミナー冒頭、「ショート動画のECにおける有効性」を語るうえで金子氏がフォーカスしたのが、この消費者行動の変化だ。
「スマホでの情報収集は隙間時間に行われることが多いため、効率よく情報を得られる『タイムパフォーマンス』が求められます。そこで、短時間で直感的に情報を得られるコンテンツとして注目を集めているのがショート動画です。消費者の54.7%がほぼ毎日ショート動画を観ているという調査もあり(※1)、別の調査ではショート動画を商品購入の参考にする消費者は2023年11月時点で69.4%もいました(※2)」(以下、発言部分は全て金子氏)。
SNS上にはInstagramのリール動画に商品を紐づけるショッピング機能や、海外で先行している「TikTok Shop」のように動画とECを結ぶものも多いが、ECサイトにおいても同様に、ショート動画をCVR改善につなげることは可能だと金子氏は話す。
「ECサイトの場合は、(来訪した時点で)すでに商品を比較・検討しているユーザーが多いため、動画で直感的に情報を伝えることで、購入への『最後の一押し』として役立てていただけると思います」
画像提供:株式会社ギャプライズ(カンファレンス登壇資料より)
「開始2秒のシズル感」で購買意欲を刺激
金子氏が成功事例として紹介した銀座千疋屋では、老舗だけにブランド力・商品力は抜群だったものの、若年層の認知に課題があり、将来的に売上が頭打ちになる懸念を抱いていたそう。そこで同店のECを支援するギャプライズは、「SNSマーケティング」と「UGC(User Generated Content=ユーザー生成コンテンツ)マーケティング」という2つの施策を実行。ユーザーレビューを基に手頃な価格帯の贈答用セットを用意するなど商品開発にも取り組んだ結果、スイーツカテゴリの売上は順調に伸びていった。しかし、スイーツに比べて高価格帯の果物カテゴリは思うような成果が得られなかったという。
「銀座千疋屋様の強みでもある、果物の鮮度の良さや品質の高さといった魅力は、画像や文章だけでは表現し切れませんでした。そこでECサイトに導入したのが、直観的に果物のおいしさを想起させるショート動画です。ショート動画を見ると、例えばメロンの柔らかさやみずみずしさが一目で伝わり、『おいしそう、食べたい』と感じていただけます」
ショート動画導入にあたって意識したのは「トップページのファーストビューに近い、ユーザーからしっかり見える場所に動画を配置する」「動画の長さは15秒程度に、直感的にシズル感を伝える」「モバイル視聴に最適化されたUIを採用する」ことの3つ。これを意識して果物カテゴリのCV改善に取り組み、さらにそれらの動画を連続で見てもらえる工夫も施した。
「ショート動画をスクロールで次々と再生できる仕組みにしました。こうすることでユーザーは果物を眺めながら食べたいものを見つけていくことができ、購買意欲を高める役割を果たします。また、動画掲載後のアクションとして個々の動画のパフォーマンス分析も行い、PDCAを回しています。銀座千疋屋様では、フルーツをカット、もしくは断面を見せるシーンが動画の冒頭2秒以内に入っていると視聴者のリアクションが良く、反対にブランドとして訴求したかった高級感のある梱包を見せる動画はあまり視聴されませんでした。
こうした改善を重ねた結果、銀座千疋屋様では、シズル感のある動画によって『興味づけ』が強化され、トップページから商品詳細ページへのユーザー遷移率が124%改善。また連続で動画を視聴いただいたことでサイト滞在時間は135%改善しました。特にSNSからサイトに来たユーザーの滞在時間は増えており、SNSとの相性の良さも見えました」
個別の商品にも動画の活用効果が表れ、(マスカットの)アレキサンドリアはCVR改善率409%、マスクメロンは172%増と大きな成果につながったという。
画像提供:株式会社ギャプライズ(カンファレンス登壇資料より)
初回ユーザーの不安を動画で解消し購入を後押し
続いて金子氏は、「初めてそのサイトで購入するユーザー」と「リピーター」それぞれに向けた効果的なショート動画活用法を解説。訪問したECサイトで初めて食品購入を検討する消費者は「今買う理由はないかも」「人気のお取り寄せスイーツ、本当においしいの?」「冷凍で届いた後にうまく解凍・調理できるか…」といった疑問や不安を抱えている。金子氏はこれらを販売者側の課題として落とし込み、「購入への動機・興味付けが弱い」「顧客にとっての必要性や商品の魅力が直感的に伝わっていない」「ブランドの信頼性を証明する情報が不足している」の3点にまとめた。
こうした不安を解消するものとして同氏が紹介したのは、シズル感あふれる映像でアテンションを獲得する「おすすめ商品紹介動画」、実際に商品を調理する様子を映した「How-To動画」、開封時のワクワク感や食べた時のリアルな反応を伝える「レビュー動画」、さらに「創業者出演動画」「製造工程動画」といった、さまざまなパターンの動画。
「『創業者出演動画』はユーザーの質問に創業者自身が答えるクイズ形式にすると不安や疑問の解消につなげることができるでしょう。また、商品を作るプロセスを映す『製造工程動画』も有効です。作っている人の顔が見える動画はユーザーに安心感を持ってもらいやすく、美容室や飲食店で『スタッフが良い人だから、また来たい』と思う感覚に近いのかもしれません」
一方、リピーターのコンバージョンが伸びないときは、消費者の商品発見を促進したり、新たな魅力を知ることができたりするコンテンツが十分でない可能性があると金子氏は指摘。それを解決する動画のバリエーションも紹介した。
「リピーター向けには、販売商品を使ったレシピ動画や、関連商品をセットで紹介するペアリング提案がおすすめです。例えば商品詳細ページにレシピ動画を掲載すれば、『次はこれを作ってみよう』と思ってもらえますし、ワインとチーズのようなペアリング提案は合わせ買いにつながります。また、商品を丁寧に梱包する様子、もしくはユーザーが受け取った商品を開封するところを映す『梱包・開封動画』はギフト用での購入を検討する方の安心材料になるでしょう」
画像提供:株式会社ギャプライズ(カンファレンス登壇資料より)
自社に適した動画制作方法を見つける
セミナーの締めくくりとして金子氏は、これからショート動画制作に取り組む事業者に向けて推奨したい3つの制作方法を紹介した。
《自社で制作する》商品のこだわりポイントをスマホで手軽に撮影
1つ目は社内での制作。断面のアップや質感の表現など、自分たちが伝えたい部分をピンポイントで絞ると、スムーズに撮影でき、費用も抑えながら動画施策に取り組める。
《動画制作会社・SNSマーケティング会社に依頼する》ブランドイメージを統一したハイクオリティ動画
2つ目は制作会社への外注。ブランドイメージを保ちつつシズル感あふれる動画や、ストーリー仕立ての動画など、高品質なコンテンツが作れる点が魅力。また、SNSでの集客用に二次利用できること、社内での工数負担があまりかからないのもポイント。
《UGCやインフルエンサーを活用する》ユーザー目線のリアルな口コミ動画で信頼性アップ
3つ目はユーザーやインフルエンサーが作成した動画の活用。企業側で気がつかないような利用者目線のリアルな動画は、ユーザーにより自分ごととして感じ、商品を知ってもらいやすくなる。
画像提供:株式会社ギャプライズ(カンファレンス登壇資料より)
SNSの浸透にともない、動画を活用した販促施策はますます重要になっていくはずだ。直観的に「おいしさ」を伝え、ユーザーの購買を後押しするショート動画の可能性を改めて伝えるセッションとなった。
※1 出典:【LINEリサーチ】ショート動画を「ほぼ毎日見ている」割合は、若い年代ほど高い傾向(ほぼ毎日=週に4~5日以上として算出)
※2 出典:生活者の5割がショート動画を利用/7割が購買への影響を与えると回答(Star Creation調査)
海外最先端テクノロジーを用いてお客様のビジネス成長をサポートする、株式会社ギャプライズへ入社。UGCマーケティングツールや、ショート動画コマースツールを用いたCVR改善や売上向上のためのご提案から運用サポートまでマルチに担当。アパレル、コスメ、食品と幅広い業界のお客様の課題改善に取り組んでいます。